在宅における医科,歯科連携

久しぶりにブログを更新いたしました。先日,私たちの病院の在宅医療を見学したいというM先生が、はるばる関東の茨城県からいらっしゃいました。当院んの在宅チームでは、数年前から,歯科チームと共同で訪問診療を行なっております。

私の病院の在宅チームでは数年前から,歯科チームと共同で訪問診療を行なっております。

訪問診療、訪問歯科診療はいずれも最近のトレンドではありますが、両者がチームを組んで一緒に訪問する体制は、日本ではまだ多くありません。当院はそのモデルケースなると考えております。これまでの業績をまとめて在宅医学会で発表したところ、M先生から質問を受け、今回の来訪につながりました。

M先生は沖縄は初めてで、東京から飛行機でいらっしゃるよていでしたが、台風のため便が欠航となり、急遽、神戸に移動され、ソラシドエアーで那覇までこられました。すごいバイタリティーです。私も、はるばる茨城から来られたM先生が落胆されないよう、精一杯のパフォーマンスで診療をおこないました。

1件目の症例は肺がんの患う80歳男性Fさん。60歳頃、定年を機に?妻と離婚し一人暮らしに。25年後のある日、偶然、元妻と街中で再会しました。その後、肺がんで体が弱ってからは元妻が身の回りの世話や食事をFさんのために届けるようになりました。元妻の家からFさんの家までは2時間もかかるそうです。

沖縄では、離婚した元夫の面倒を元妻がみていることがよくあります。子供達は複雑な心境でそれを見守っています。患者さんの口腔内は比較的清潔でしたが、痩せて義歯が合わないため、噛み合わせがうまくいっていませんでした。歯科医師のH先生は手際よく義歯を削って今の患者さんのお口に合うよう義歯を調整されました。患者さんは満面の笑みで喜んでおられました。このように、その場で患者さんのパフォーマンスを目に見える形で改善できるところが歯科の魅力ではないかと思います。

2件目の症例は認知症の80台男性Kさん。肺炎、腎盂腎炎で入院となり、抗菌薬治療で改善したため自宅へ退院されましたが、入院中から食事摂取が進まず、退院後の暮らしに不安があったため、歯科チームと訪問しました。退院後は食欲も戻って見違えるほど元気になっておられましたが、義歯に食物残渣が大量に付着し不衛生な状態でした。これを口に入れていたらまたいつ肺炎になるか分からないですよね。義歯を洗浄して、時々、義歯を外すよう本人やご家族にアドバイスされていました。今回の訪問で、肺炎が未然に予防できるかもしれません。

 医師の診察の時には患者さんはなかなかお口を開けてくれなかったり、口腔内が不衛生であっても直接介入が難しいのですが、歯科医師、衛生士が診察するとその場でケアや義歯の調整、家族へのアドバイスも的確に行なってくださるので患者さんには大きなメリットがあります。彼女たちは患者さんやご家族とのコミュニケーションも上手で、私が気づいていなかった問題点を教えてくれたり、家族の本音や悩みをうまく引き出してくれたりして、非常に助かっています。歯科チームとの共働は、患者にとって目に見える形、見えない形での恩恵が数多くあると感じたので、今後、データをまとめて世の中に発信できればと考えております。

以下は今年の在宅医学会に掲載した抄録の一部です。

在宅医療における医師と歯科口腔外科チームとの共同診療が患者にもたらす恩恵

目的

 沖縄県立中部病院は高度救命救急を診療の軸としながら,平成24年に地域ケア科を設立し,悪性腫瘍終末期の患者を中心に訪問医療,往診を行っている我が国でも稀有な病院である.

 平成26年からは医師に加えて歯科医師,歯科衛生士が在宅チームに加わり,共同で診療を行っている.歯科チームが在宅医療に加わる前と後で診療アウトカムにどのように変化したのかを後方視的に検討した.

方法

 歯科チームが訪問診療を開始する以前の患者106名(A群)と平成26年9月〜平成28年12月までの間に歯科チームの訪問診療を受けた患者72名(B群)ついて、患者の年齢、訪問診療期間、緊急往診の頻度、診療期間中の発熱や気道症状の割合, せん妄の頻度などについて比較検討を行った.

結果

 患者の平均年齢はA群にて75.2歳,B群にて77.4歳であった.両群とも90%以上が悪性腫瘍であった.訪問診療の平均期間はA群にて23.9日,B群にて49.1日であった.患者一人にあたりの訪問診療の平均回数はA群で5.48回,B群で5.37回,緊急往診の平均回数はA群で1.77回,B群で1.57回であった.

診療期間中に38度以上の発熱がみられた回数は患者一人あたりA群で0.68回,B群で0.22回であった.また,死の1週間前の時点で経口摂取が困難であった患者はA群で61名(58%),B群で15名(21%)であった.診療期間中にせん妄症状がみられた患者はA群で19名(18%), B群で5名(6.9%)であった.

考察

 今回の研究では、歯科チームの介入後に発熱やせん妄の頻度の減少傾向となり,患者の生存期間は長くなる傾向であった.また,患者は死の直前まで経口摂取が可能となる傾向がみられた. 今回の調査項目に関しては交絡因子が多く,今後,多変量解析などの統計学的処理が必要である.歯科医師,衛生士との連携が患者にどのような恩恵もたらすのかを明らかにすることで,歯科チームの役割がより明確になり,在宅歯科医療の普及につながることが期待される.

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