12月20日 新世界の始まり
2020年12月20日
この日は、沖縄でコザ暴動という大きな事件が起きてからちょうど50年になります。
私は、沖縄へ転勤するまで、恥ずかしながらこの事件について知りませんでした。
沖縄へやってきてから、地域の人々と交流し、沖縄の歴史について学びました。当時の沖縄県民の方々の気持ちを想うと本当に胸が締め付けられます。今も沖縄の基地負担の現状は変わりません。平和な世の中に感謝しつつも、沖縄の持つ「影」の部分に目を背けてはならないと思います。
コザ暴動に関する資料
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%82%B6%E6%9A%B4%E5%8B%95
今日は当直明けでした。寒くなってきたので鍋料理をいただきました。
NPO法人ハンズオンの方々が丹精込めて畑で作った「うりずん豆」をお裾分けしていただき、広島のKさんからいただいた日本酒を楽しんでおります。
今年もあと残すところ10日あまりとなりました。
私の所属する沖縄交響楽団の定期演奏会が12月20日に開催されます。
当初、10月予定の本番が延期され、この日になりました。
ここに至るまで、楽団の運営幹部の方々、トップ奏者の方々には大変な苦労がありました。感染対策、集客、練習の調整など、、本当に感謝です。
紆余曲折を経ましたが、コンサートが開催できる喜びを噛み締めながら、観客の皆様と楽しい時間が過ごせれば幸いです。
今年はベートーヴェンの生誕250年が有名ですが、ドヴォルザークの「新世界」が日本で初演されてから、ちょうど100年になるみたいですよ!これは意外と知られていないかもしれません。
今年は幸いにも、パンフレットの曲目解説でメイン曲の執筆を担当させていただきました。少し早出しではありますが、以下に解説を掲載させていただきます。クラッシック音楽を初めて聴く方にも分かりやすい説明を心がけました。
コロナウイルスの到来は人類にとって、新たな世界の扉を開くことになるのでしょうか?
<曲目解説>
ドヴォルザーク 交響曲第9番 ホ短調 作品95「新世界より」
アントニン・ドヴォルザーク(Antonín Leopold Dvořák 1841年〜1904年)は後期ロマン派におけるチェコの作曲家です。9つの交響曲をはじめ,室内楽曲, スラヴ舞曲集, ユモレスクなど, 彼の遺した多くの作品は音楽史に燦然と輝いています.
ドヴォルザークの音楽の特徴は何と言っても「美しくて親しみやすいメロディー」であり,1曲の中に華やかで魅力的な旋律がいくつも登場します.
食事に例えるならば「世界中の人気料理を集めて,さらに美味しくアレンジしたレストラン」のようです.
今回お届けする交響曲第9番「新世界より」はドヴォルザークがニューヨーク・ナショナル音楽院院長を務めていた1893年に完成させた交響曲です.「新世界」とはアメリカを意味しており,ドヴォルザークは友人宛の手紙の中で「この作品は以前のものとは大きく異なり,わずかにアメリカ風である」と書いています.
ドヴォルザークが新大陸アメリカで出会ったネイティヴ・アメリカンの音楽が,彼の故郷,ボヘミア地方の音楽に似ていたことや, この曲が日本という,文化や習慣が全く異なる地域でも親しまれていることは,音楽の持つ不思議な魅力と言えるでしょう. そして,故郷を懐かしむ気持ち, 大切に想う気持ちは万国共通なのかもしれません.
我が国で「新世界より」が初演されたのは,今からちょうど100年前の1920年12月29日, 指揮は「赤とんぼ」で有名な山田耕筰氏でした.
普段, クラッシックに馴染みがない方でも,どこかで聞いたことのあるメロディーが入っており,最後まで楽しんでいただけるのではないかと思います.
第1楽章 Adagioゆっくり – Allegro molto非常に速く
曲はチェロによる旋律で始まります.あたかも夕陽が沈んでいくようにゆっくりと下降し,ホルンによる運命的な一声,木管楽器よる哀愁漂う響きの後,突如として弦楽器による切り裂くような音形とそれを受けるティンパニの連打が出現します.
第一主題はホルンによって奏でられます.この「ターンタ,タター」というリズムはのちにも繰り返し登場し,全曲の統一感を作っています.
中盤から登場する第二主題は優しい雰囲気があり,フルートとオーボエによって奏でられます.このメロディーはアメリカの黒人霊歌の影響を受けています.
第2楽章 Largo ゆったりとのびやかに
変二長調という天国的な響きをもつ,美しい楽章です.
不思議な美しさを持つたっぷりした和音による短い序奏に続いて,イングリッシュホルンにノスタルジックな気分に溢れたメロディが出てきます.日本でも「家路」の名で親しまれています.このメロディを聞くと小学校の放課後を思い出す人も多いことでしょう.
中間部は少しテンポが速くなります. 弦楽器のさざめきの上に木管楽器を中心に少し寂しげなメロディを演奏します.その後オーボエに細かい音形が出てきて,ぐっと盛り上がります.トロンボーンの演奏する第1楽章の主題とトランペットの演奏する「家路」の主題とが組み合わされて, 立体的なクライマックスを作ります.
その後,イングリッシュホルンが再度登場して,途中から弦楽器に旋律が移ります. 冒頭の不思議な和音が再度出てきたのち,最後はコントラバスの重低音で静かに結ばれます.
第3楽章 Scherzo. Molto vivace スケルツォ
インディアンの婚礼の祝宴を描いた「ハイアワサの歌」という詩にヒントを得て作曲された曲です.短い序奏ののち, 木管楽器による舞曲風の主題が出てきます.
中間部ではスラヴ舞曲を思わせるような穏やかに弾むような主題が出てきます.ここでも木管が中心となっています. その後,最初のメロディが再現し,コーダになります.この楽章では, 打楽器のひとつであるトライアングルが活躍します.
第4楽章 Allegro con fuoco熱烈に速く
新しい時代の扉を開けるような劇的なフィナーレ. 血湧き肉躍るような重厚で力強い旋律が楽器や音量を変えて繰り返し演奏されます. 全曲を通じてただ1度だけのシンバルが打たれますが, 弱音で目立たないので聴くことができるでしょうか?
フィナーレでは弦楽器が壮大に主題を奏で, 管楽器は第1, 第2楽章の主題を奏して対抗, ホ長調に転じてこれを振り切り,テンポを上げて感動的に終結します. 最後の1音は和音をディミヌエンド(音量を落としていく)しながら出すというものです. あたかも21世紀に向かって伸びる架け橋のように, 響きはゆっくり空間へと消えてゆきます。
1世紀以上にわたり世界中の人々から親しまれたこの名曲を, 私たちは心を込めて演奏し, 次の世代に伝えてゆきたいと思います.
本日は困難な情勢の中, ご来場いただき誠にありがとうございました.
演奏会が開催できることの喜びをしっかりとかみしめながら, 会場のみなさまと共に「新世界=新しい時代の幕開け」を感じることができれば幸いです.
コンサートをより楽しむ方法
- 主旋律(メロディー)を担当している楽器以外のパートに耳を傾けてみる(弦楽器であればセカンドヴァイオリン,ヴィオラなど):様々な音楽が立体的に重なり合っている様子がわかります.
- 音量が小さく, 静かな場面での響きを味わってみる:音が重なり,ハーモニーを作っている様子が味わえます.
- コントラバス, 打楽器に注目してみる:オーケストラを底から支え, 動かしています.
- 楽章の間での拍手はお控えいただく:全ての楽章が終わった時に,温かい拍手をいただけると幸せです.