非結核性抗酸菌について

お久しぶりの投稿になります。沖縄は梅雨は開けたものの、最近はずっと雨模様で湿度は半端ないくらい高いです。さて、明日は沖縄県呼吸器セミナーという、研修医や医学生向けの勉強会で登壇してきます。

沖縄には医科大は琉球大学しかありませんが、学閥がほとんど存在しません。大阪で働いていた時には、阪大、京大、大阪市大などの大学がたくさんあり、それぞれの大学の医局の系列の病院がありました。沖縄は狭いということもありますが、病院間での交流がさかんで、このような病院の垣根を超えた勉強会も頻繁に行われています。

今回、私がお話する内容は、非結核性抗酸菌症(NTM)についてです。この分野についてまとまった講演を聞くことは、学会以外ではあまりないと思います。NTMについて簡単にご紹介します。

非結核性抗酸菌(nontuberculous mycobacteria: NTM)は,抗酸菌の中で結核菌群とらい菌などを除くものを指します。患者さんには「結核の親戚みたいな菌ですよ」と説明しています。 NTMは世界中に分布している環境常在菌であり,土壌や水などから検出されます。 通常,ヒトからヒトへの感染,動物からヒトへの感染はないとされています。同じ抗酸菌である結核菌が環境中では長く生存できず,ヒトからヒトへの感染を繰り返すこととは対照的であります。 世界中で様々な菌種によるNTM症が確認されています.

 近年の疫学調査では,国内における肺NTM症の罹患率が,7年前と比較して2.6倍と急激な勢いで上昇し,2014年以降は肺結核の罹患率を上回り,公衆衛生上,重要な感染症となりつつあります。  肺NTM症は上述の通り,原則としてヒトからヒトへの感染がありません.このため肺結核のように排菌患者に対して結核菌のような厳重な隔離などは必要としません.一方で,抗菌薬に治療抵抗性で、お薬だけでは完治に至らない菌種が多いこと,結核治療と異なり治療期間が年単位の長期に及ぶとことなどが特徴的であります。

NTMは肺に感染することが最も多く、肺NTM症と呼んでいます。NTMは知られているだけでも184種類程度の菌種があり、そのうち病原性(人体に悪さをするもの)を有するものは50種類くらいと言われています。日本ではMycobacterium avium complex(MAC)といわれるものが8割、ついでMycobacterium kansasii, Mycobacterium abscessus complex(MABC)と続きます。

MABCは私の重要な研究テーマのひとつです。台湾,韓国ではMycobacterium(M.) avium complex(MAC)に次いで検出頻度が高く,日本本島では稀な菌種であるが,近年,沖縄本島でMABCが高頻度に検出され注目を集めております。 筆者の調査では,MABCはMACに比べて慢性閉塞性肺疾患(COPD)および気管切開を受けた患者に多くみられました.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5653325/ また、MABCの亜種(subtype)によって,臨床経過やマクロライド系抗菌薬に対する感受性が異なる可能性があり,今後の知見集積が望まれます

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私は菌を人に例えると、結核菌が「変質者のおっさん=見つけたら即逮捕」に対して、NTMは「お隣さん=平和共存、時に厄介、なかなか縁がきれない」に似ているかと思います(笑)。え、何のことかわからないって?そう思われる方は、私の講演や論文を読んでいただければと思います。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5653325/

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/rcr2.428

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