私と音楽

 私は趣味で、ヴァイオリン、ヴィオラを演奏します。音楽を始めたのは5歳の頃ですが、真面目に楽器と向き合い始めたのは20歳を過ぎてからでした。大学で作曲者、指揮者としてご高名な保科洋先生と出会い、オーケストラでアンサンブルの楽しさ、素晴らしさ、奥深さを学びました。しばらく弾いていなかったヴァイオリンと向きあいましたが、周りの人がとても上手く弾けているのに、自分だけ音程やリズムが合わず周りと全く合っていないことに気がつきました。大勢の人と練習すると、自分が如何におかしな音を出しているのかがよくわかり、大学当初はかなり苦しみました。しかし、尊敬するヴァイオリンの三宅明子先生と出会い、弓の持ち方から楽器の構え方、肘の位置など基礎的な部分を徹底的に修正していただきました。長年、自己流でやっていた私には相当変な癖がついており、それを取るのに1年以上かかりました。今でも、自分が理想とする音にはほど遠いですが、何とか人前で一人もしくは数人で演奏できるほどには改善されました。オーケストラ、音楽を通して貴重な多くの仲間と出会いました。ヴァイオリンをやっていなければ自分の人生はもっと空虚なもので、自分の居場所はどこにもなかったかもしれません。

 第一線で医者をやりながら音楽活動も続けてゆくことは並大抵のことではありません。医学も音楽も、それ一本に人生を捧げることができるほどほど奥の深い分野だからです。だからと言って、仕事を言い訳にして中途半端な音楽、満足いかない演奏を人前に出すことも容認できないのです。この苦しみは一生解決できないものかもしれません。理想の音には程遠いかもしれません。しかし、常に人の生死に関わる医療者だからこそ、表現できる音、演奏があると信じています。また、以前は趣味と仕事は両立し得ないと思っていました。しかし、病院コンサートや患者さんの前で演奏する機会が増えてきて今、思うことがあります。病で苦しい思いをしている人、コンサートホールに行けないほど体が弱っている人にも音楽は必要としているということです。苦しみを抱えている人、コンサートに行くことができない人たちに音楽を届けること、まだ知られていない隠れた名曲を発掘して世に送り出すことが演奏家としての私の使命と思う今日この頃です。

 最近はヴィオラを練習し、演奏の幅を広げているところです。ヴィオラを通して、他者に寄り添うこと、他者の名演奏を引き立てることが自分の喜びににつながるを学んでいます。音楽は私の人生に潤いを与え、心に栄養を与えてくれます。その味は時々ビターですが、噛めば噛むほど、深い味わいになります。

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