在宅医療とコロナ対策(流行期)

沖縄県でもコロナウイルス感染が県内流行期に入ろうとしています。

感染経路不明な感染者の割合が増え、市中での感染が広がりつつあります。

私たちは誰もがコロナウイルスに感染する可能性があるのです。

私たち医師は自分自身、大切な人を守りながらも、なるべく多くの患者さんを助ける使命があります。

沖縄県でも感染症内科,そして私たち呼吸器内科の医師が中心となって患者さんの治療、感染対策を行っています。重症患者を収容するため、ICUや病棟を開けて病床確保に勤めております。

私は病院勤務医であると同時に、在宅医として、お家で過ごす患者さんの穏やかな生活を守らなければなりません。

在宅医の視点から、感染流行期において地域を支えてくださる医療職、介護職、ご家族のお役に立てる内容を発信できたらと考えて行きたいと思います。

大原則

1、できるだけ移動しないこと, 不要不急の面会は避けること。

 感染症は人(その人が触れたモノ)を介して拡大してゆきます。他県からの来客、お見舞いなどはこの時期は控えていただきましょう(お看取りなどの場合を除く)。咳、発熱など風邪症状がある人の外出を控えてもらいましょう。

2、訪問回数は必要最小限にとどめる. 連絡は密に行う。

 在宅では患者さん、ご家族の苦しみに寄り添うために、より緊密に接してゆきたいと考える援助者も多いでしょう。少しでも患者さんの苦しみを緩和するため、テレビ電話を使って離れた家族と会話をしたり、訪問看護師はご家族や他の医療職との連絡を多めにとってあげると良いでしょう。たとえ、距離は離れていても、「心はあなたの側にいます、あなたを支えてゆきたい」という想いを伝えてあげたいですね。

3、不要不急の病院受診は避ける。

 コロナ患者を受け入れる病院は病床確保のため、入院患者さんの退院、転院を促進しています。急性期病院へのアクセスを見直す良い機会かもしれません。

4,  医療現場および, 全ての患者を訪問, 診察する際には,マスクや自分自身の首から上の部分には手を触れないようにする.触れる際には手指衛生(アルコール消毒)を行ってからにする.

こちらは医療スタッフ向けの情報です。

ご高名な倉原先生のブログ「呼吸器内科医」を引用させていただきました。

コロナ患者さんへの酸素投与ですが、鼻カニューレ、NIVをしているときは飛沫の飛散が長距離まで及ぶため、医療従事者は感染のリスクが高くなるとの報告があります。

Martina Ferioli,et al.
Protecting healthcare workers from SARS-CoV-2 infection: practical indications.
European Respiratory Review 2020 29: 200068; DOI: 10.1183/16000617.0068-2020

45°傾斜した病院ベッドに座っている70kgの成人男性シミュレーターを用いて、陰圧室で行われたSARS-CoV-2の飛散に関するデータは表のようになったとのことです.

<表. 酸素デバイスごとの飛散>

鼻カニューレ5L/分  最大飛散距離 100cm

口鼻マスク4L/分 最大飛散距離 40cm

リザーバーマスク12L/分 最大飛散距離<10cm

口鼻マスク(CPAP)20cmH2O  空気中飛散は無視できる

高流量鼻カニューレ60L/分 最大飛散距離 17cm(固定されず横漏れしたら62cm)

高流量鼻カニューレ装着時には、サージカルマスクを患者の口に装着することで飛散を減らすことが可能かもしれません. ただ、マスクを装着させてもエアロゾルは残る可能性があり部屋の換気などが必要になるかもしれません。

現実的には

・デバイスを使用する際にはフィットを徹底させ、横漏れを避ける

・挿管適応がある人はNHFで粘らず早めに挿管するのが良いか?

・鼻カニューレよりも口鼻マスク、リザーバーマスクのほうが飛散しにくいか?

終末期の医療と共通していることですが、感染症もそのフェイズによって対策を変えてゆかねばなりません。いわゆる「ギアチェンジ」が必要となります。

今、沖縄は感染流行期に入ろうとしています。この時期は全ての人々の移動を制限し、自宅で待機することを要請します。病院でも家族の面会は禁止され、患者さんは寂しい思いをされるかもしれません。こういう時こそ、ラインやテレビ電話などを使って思いを届けましょう!人は、支えがあれば苦しみの中でも強く生きようとします。

私たちは改めて、何のために耐えているのですか? 苦しみの中で気づいた、自らの支えは何ですか? 将来の夢はありますか? 自分の内なる声と対話しながら、できることをやっていきたいと思います。明けない夜はありません。必ずこの難局を皆で乗り切って、また笑顔再会できればいですね!

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